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ワコールやライオンが明かす、分散型メディア時代のデジタル戦略

【セミナーレポート】ワコールやライオンのキーマンが明かす「分散型メディア時代のデジタル戦略」とは?

SNS全盛の時代に有効なコンテンツマーケティングとは、どのようなものでしょうか?オウンドメディア運営に精通したワコールやライオンのキーマンが「分散型メディア時代のデジタル戦略」を明かします!

コンテンツをSNSやキュレーションメディアを通じてユーザーに届ける「分散型メディア」の台頭に伴い、企業のコンテンツマーケティングの手法も変わりつつあります。オウンドメディアを開設して“待っているだけ”ではユーザーを集めることが難しい現在、コンテンツをターゲットに届け、ユーザーの態度変容を促すには、どのようなデジタル戦略が求められるのでしょうか。

その課題を解決するヒントを探るため、3月3日に都内で開催されたビジネスセミナー「分散型メディア時代に対応したSNS活用&コンテンツマーケティング」の内容をご紹介いたします。

当日は、オウンドメディアの運営に多くの実績と知見を持つワコールやライオンのデジタル戦略のキーマンがパネルディスカッションに登壇。分散型メディア時代にオウンドメディアを運営するポイントや、SNSをデジタル戦略に組み込む方法などについて討論しました。


また、デジタルエージェンシーのインフォバーンや、SNSマーケティング支援のアライドアーキテクツが、分散化メディア時代に情報をユーザーへ届けるためのコミュニケーション方法などについて解説。成功した多数のSNS事例も公開されたセミナーの一部をレポートします。

 


【当日のプログラム】


■第1部 「分散型メディア時代のコンテンツマーケティング」
株式会社インフォバーン ソリューション部門 ディレクションユニットマネージャー 杉浦香氏
 
■第2部 「ソーシャルCRM これからのSNSマーケティング」
アライドアーキテクツ株式会社 上級執行役員 津下本耕太郎氏

■第3部「分散型メディア時代のデジタル活用」(パネルディスカッション)
<モデレーター>
田中 準也氏(株式会社インフォバーン 執行役員 アカウントプランニング部門及びDIGIDAY事業担当)
<パネリスト>
内田 佳奈氏(ライオン株式会社 宣伝部 デジタルコミュニケーション推進室)
北見 裕介氏(株式会社ワコール 総合企画室 広報・宣伝部 WEB・CRM企画課)
津下本 耕太郎氏 (アライドアーキテクツ株式会社 上級執行役員)


第1部 「分散型メディア時代のコンテンツマーケティング」 

第1部ではインフォバーンの杉浦氏が「分散型メディア時代のコンテンツマーケティング」と題して、分散型メディアが台頭している背景や、それに伴い企業のオウンドメディアを取り巻く環境が変化していることなどを解説しました。

株式会社インフォバーンディレクションユニットマネージャー杉浦香氏
株式会社インフォバーン ディレクションユニットマネージャー 杉浦香氏。雑誌の編集者などを経て2007 年にインフォバーン入社。コスメ、フィットネス、アパレルなどのサイト制作に携わり、現在はオウンドメディアからキャンペーンサイトまで幅広くプロデュースしている  


分散型メディアが台頭した背景と課題

杉浦氏は、分散型メディアが台頭した背景として、
①インターネットの接触デバイスがPCからスマホへ移行
②ネット上のコンテンツ量が爆発的に増加
③キュレーションメディアの台頭
④オンライン動画がモバイルで視聴されるようになった
⑤SNSで情報を探す(検索する)ユーザーが増えた
  の5つがあると指摘。その結果、消費者のコンテンツ消費に対する意識や行動が変化し、「ネット上にメディアが多すぎて、オウンドメディアを作っただけではコンテンツを見てもらえない。オウンドメディアの名前すら覚えてもらえないという課題がある」と現状を説明しました。


分散型メディア時代の生活者トレンド
SNSユーザーの43%は接触したコンテンツの発信元サイトを知らないなど、コンテンツ消費の在り方が大きく変化している。

コンテンツをユーザーに届けるには、「インターネット上でコンテンツが流通する仕組みを理解する必要がある」(杉浦氏)と述べ、企業が発信した一次情報をWEBメディアがニュースとして発信し、さらにニュースアプリやキュレーションメディア、SNSなどを経由してエンドユーザーに届く生態系の中に自社のコンテンツを組み込む必要があると強調。

オウンドメディアの「分散型メディア化」が進むと、ユーザーは外部サイトやSNS上で記事を読む機会が増えるため、オウンドメディアのPV数やアクセス人数が下がりやすいことも指摘し、メディアやコンテンツの効果を判断する際は、「単純にPV数のみで判断するのではなく、SNSでどれだけシェアされたかや、キュレーションメディアでどれだけアクセスを集めたかなど、企業の目的に応じてKPIを設定することが必要になってくる」(同)とSNS活用の重要性を説明しました。
 

インターネット上のメディアネットワーク
情報流通の「生態系」に自社のコンテンツを乗せていく必要がある

 

分散型メディアとオウンドメディアを目的で使い分ける

杉浦氏は、「分散型メディアは自社の商品やサービスをよく知らないユーザー(潜在層)にアプローチする上で有効だ」と述べた一方、企業や商品について詳しく知りたいと考えている消費者(顕在層)には情報を集約したポータルサイトが不可欠になるため、検索エンジンからの受け皿としてオウンドメディアが有効だと指摘。メディアの役割を踏まえ、「コンテンツを届けたいユーザーが潜在層なのか顕在層なのかによって、分散型メディアとオウンドメディアのどちらに重心を置くかを判断する必要がある」(杉浦氏)と解説しました。

コンテンツマーケティングの「重心の置き方」
ターゲットとするユーザーの状態に合わせて、SNSや外部プラットフォームの利用方法をプランニング調整することが必要

 

第2部 「ソーシャルCRM これからのSNSマーケティング」 

第2部ではアライドアーキテクツの津下本上級執行役員が登壇し、SNS活用によるCRM戦略のポイントなどを解説しました。

津下本氏は冒頭、企業がSNSアカウントを運用する前提として、「ソーシャルメディアはバイラルを狙うだけでなく、ユーザーとのタッチポイントを作り、CRMに活用することで効果を発揮することを押さえておく必要がある」と、SNS活用の重要性を強調。SNS活用によるCRMのポイントとして、 (1)SNS上のユーザーのデータを貯める(2)貯めたデータを使ってユーザーに最適なアプローチを行う--という2点を挙げました。

アライドアーキテクツ株式会社上級執行役員津下本耕太郎氏
アライドアーキテクツ株式会社 上級執行役員 津下本耕太郎氏。製鉄企業のエンジニアを経て2007 年にアライドアーキテクツ入社。マーケティング事業の立ち上げを歴任、現在はモニプラ事業の責任者などを務める。

 

SNS上のユーザーのデータを貯める方法

SNSユーザーはFacebookやTwitter、Instagramなど複数のSNSアカウントを使い分けていることが多いため、SNS上のユーザーデータを貯める際は、「複数のSNSアカウントのデータを横断的に収集し、一人のユーザーがどこで、どんな情報を受け取っているのかを一元管理すべき」(津下本氏)と指摘。その上で、SNS上でアンケートやキャンペーンなどを行い、SNS活用によってキャンペーンや拡散をすることで、ファンやフォロワーの「ネットプロモータースコア」「購買経験」「購買意向度」などを計測してセグメントを計測。SNS活用によってセグメントごとに最適なプロモーションを行うことで、販促施策の効果を高めたり、おおよそのROASを計算したりすることが可能になると説明しました。

モニプラ管理画面
各ユーザーのSNS上の行動を横断的に分析する必要がある。画像はアライドアーキテクツが提供しているSNSキャンペーンサービス「モニプラ」の管理画面。

 

貯めたデータを売上拡大に生かす

SNS上のデータを活用して売り上げ拡大につなげた企業の成功事例も公開しました。

寝具大手の西川産業は、Facebookアカウントのファンをブランドロイヤルティで分類し、「すでに商品を使っている」「商品に興味があり、購入の可能性が高い」「ブランドに興味がない」といったブランドに対する愛着の強さに応じて配信するコンテンツを変更。Facebook広告でターゲティング配信した結果、「未購買者」の16.6%が新規顧客になり、認知のみだった「低関心層」の78%が「関心状態」にブランドリフトが上昇するなど、高い成果を上げたそうです。

 

西川産業のCRM戦略
西川産業はSNSを活用したCRM戦略で高いプロモーション効果を実現した

こうした成功したSNS事例を踏まえ、津下本氏は、「オウンドメディアやコンテンツマーケティングの成果をPVやサイトへの流入数だけで計測するのではなく、CRMに役立てることを意識すると売上拡大につながりやすい」と改めて強調しました。


第3部「分散型メディア時代のデジタル活用」(パネルディスカッション)

第3部のパネルディスカッションでは、インフォバーンの田中準也執行役員がモデレーターを務め、ワコールWEB・CRM企画課の北見裕介氏、ライオンデジタルコミュニケーション推進室の内田佳奈氏、アライドアーキテクツの津下本上級執行役員がパネラーとして登壇しました。

株式会社インフォバーン執行役員田中準也氏
<モデレーター>株式会社インフォバーン 執行役員田中準也氏。ジェイアール東日本企画、電通、トランス・コスモスなどを経て、2015年から現職。マスからデジタル、オンラインとオフラインを横断する総合的なコミュニケーションデザインが得意。

 

株式会社ワコール広報・宣伝部WEB・CRM企画課北見裕介氏
<パネリスト>株式会社ワコール 広報・宣伝部 WEB・CRM企画課 北見裕介氏。2008年にワコール入社。情報システム部を経て現職。コーポレートサイトの運営、メルマガ、SNS、ネット広告などWEBウェブ業務全般に携わる。

 

ライオン株式会社宣伝部デジタルコミュニケーション推進室内田佳奈
<パネリスト>ライオン株式会社 宣伝部 デジタルコミュニケーション推進室 内田佳奈氏。2010年にWeb解析ベンダー会社へ入社し、営業およびデータ分析業務に従事。2014年にライオンへ入社。宣伝部にてマス・デジタル横断型のコミュニケーション設計に携わっている。

 

アライドアーキテクツ株式会社上級執行役員津下本耕太郎氏
<パネリスト>アライドアーキテクツ株式会社 上級執行役員 津下本耕太郎氏。製鉄企業のエンジニアを経て2007 年にアライドアーキテクツ入社。マーケティング事業の立ち上げを歴任、現在はモニプラ事業の責任者などを務める。

 

ワコールとライオンのオウンドメディア戦略

まずはワコールの北見氏とライオンの内田氏が、2社が運営しているオウンドメディアの現状や目的、コンテンツの制作体制などを説明。その後、ディスカッションのテーマはSNS活用の方法やサイト運営で工夫している点、コンテンツマーケティングの成果などへと深まり、実務に基づいた貴重な情報が次々と飛び出しました。

ワコールは機能性スポーツウェア「CW-X」に特化したメディアなど複数のオウンドメディアを運営。オウンドメディアを運営している目的の一つは「商品の販売以外で顧客とコミュニケーションを行い、顧客接点を開発するため」(ワコール・北見氏)。発信している記事はすべてオリジナルコンテンツ。メディア運営の主要メンバーは2~3人ですが、あまりWebに詳しくない社内のブランド担当者が投稿できるCMSを導入することで、リッチなコンテンツを高い頻度で更新しています。

続いてライオンの内田氏が、オウンドメディア「Lidea(リディア)」について説明。「リディア」のテーマはコンテンツを通じて消費者の生活課題を解決すること。ライオンの事業ドメインである「洗濯」「掃除」「キッチン」「オーラルケア」「ヘルスケア」をテーマとして取り上げており、「マイスター」と呼ばれる専門分野出身の各カテゴリに精通した社員が記事の企画立案や執筆を行うのが特徴。記事を作るために実験を重ね、生活者調査を行うなど1本の制作に1~2ヶ月かけてクオリティを担保しているそうです。

 

ライオン社運営のオウンドメディア「リディア」
ライオン社運営のオウンドメディア「リディア」

ワコールのオウンドメディア「CW-X」は昨年、分散型メディア時代を意識してシステムの全面リニューアルを行い、WEBサイトの運用負荷を下げることを目指して設計。担当者の時間をつくることで、FacebookやTwitter、Instagramの更新に余裕をつくることが狙いだったとのこと。従来はトップページを中心にサイトを運営してきたが、リニューアル後はコンテンツをWEBサイトへの入り口と捉え、トップページはあくまで「ブランド名を知っている人が訪問するページ」に位置付けるなど、カスタマージャーニーを意識したサイト構造に変更したそうです。

分散型メディアに舵を切った理由について北見氏は、「オウンドメディアのトップページに掲載されている情報がSNS上にも流れていないと、SNSしか見ないユーザーからは『情報が存在しない』とみなされてしまう。また逆にSNSにだけ情報配信すると、そのSNSのアカウントを持っていないユーザーから『情報が存在しない』とみなされてしまう」と説明。「システムのリニューアルとともに、FacebookやTwitter、Instagramのアカウントを立ち上げたことにより、SNSからサイトへの流入比率が大幅に増えた」(同)とSNS活用によるマーケティングの成果を強調しました。

 

ライオンの内田氏は、自社製品に紐づくSNSとリディアなどオウンドメディアに紐づくSNSで展開方法に違いがあると説明。自社製品に紐づくSNSは、生活者とのエンゲージメントを深めることを目的に情報発信しているが、リディアなどオウンドメディアに紐づくものは、生活者のモーメントを捉えた情報発信の場として活用していると説明。例えば、雨が降っている日に部屋干しに関する記事を配信するなど、きめ細かい運用を心がけているそうです。「消費者にとって情報を受け取りやすいメディア、受け取りやすいタイミング、受け取りやすい場所がどこかを考えている。そうすると、リディアのトップページに毎日の情報を取りに来ていただくことを生活者に課すのは不自然。リディアでなくても、生活者が普段使っているサービスやSNSのなかで、自然にリアルタイムな情報を受け取ることができるよう、ある意味で分散型メディアの考えを取り入れて設計している。」(内田氏)。


オウンドメディアの会社への貢献度

オウンドメディアが会社にどのように貢献しているかというテーマでは、ライオンの内田氏は、「デジタルデータから顧客のインサイトを読み取って、店頭施策や製品プロモーションを設計しようという動きが出てきている」と説明。記事のアクセス数の推移や流入キーワードの傾向等から消費者のニーズや行動を読み解き、店頭の棚作りに生かしていることを紹介しました。

また、「リディアのコンテンツから、直接製品の購入に繋がらなくても良いと考えている」(内田氏)と述べ、記事を通じて“そのとき生じている生活の悩みの解決方法”を理解してもらうことで、「解決方法がわかった上で納得感を持って製品を購入していただいたり、購入後の使用方法サポートの役割を果たすことで製品使用時の効果実感を高めたりする」(同)とリディアの目的を説明しました。記事を作る上では、「消費者が使う製品をライオン製品に限定しない」ことを意識し、「メーカーの独りよがりな情報発信ではなく、生活者の課題に即した情報を発信していくことで、長期的にライオンへの好意度やロイヤルティの向上につながっていけば良い」(同)と考えているそうです。

ライオンの内田氏
「リディア」の目的や会社への貢献度について説明するライオンの内田氏

 

コンテンツの良し悪しはどう評価する?

ディスカッションのテーマは「コンテンツの良し悪しをどのように評価するか?」について。ワコールの北見氏は、PV数はコンテンツの良し悪し以外の要素に左右されることも多いと指摘した上で、コンテンツを評価する難しさもにじませました。ライオンの内田氏は、会員登録数がKPIの一つだと説明した上で、「リディアの最終目標はライオンのロイヤルティ向上だということを踏まえると、必ずしも会員登録数だけが評価基準ではないと最近は感じている。その辺りも見直している最中です」と課題を述べました。

コンテンツの評価指標について議論する北見氏と内田氏
コンテンツの評価指標について議論する北見氏と内田氏


メディアは「見た目」ではなくユーザー体験が重要

パネルディスカッションの最後、インフォバーンの田中氏は、「北見さんも内田さんも、デザインやトンマナの話を一切していなかったことは興味深い」とコメント。従来型の広告コミュニケーションで重視されるデザインなどについて議論されなかったことを踏まえ、「2社はアプローチの方法こそ異なるものの、『ユーザーがどのようにコンテンツに接触するか。接触した後にどういう行動をするか』を重視し、消費者の視点で運用している点では共通している」と総括しました。

 

ユーザー視点の重要性を改めて強調した田中氏
ユーザー視点の重要性を改めて強調し、パネルディスカッションを総括した田中氏

今回のセミナーでは、現場のリアルな情報や成功事例など、たくさんの貴重な情報を知ることができました。情報が爆発的に増え、情報伝達の経路が複雑化している現在、コンテンツマーケティングを成功させるには、オウンドメディアの目的を明確に設定した上で、ユーザー視点で作ったコンテンツをSNS活用を通じて最適な形で発信していくことが大切だと改めて実感した1日でした。

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