SNS for Biz
by Allied Architects

【第二回】ソーシャルリスニングの特徴と活用方法

顧客の理解にはSNS活用が有効

前回「【第一回】CRMとSNSとの親和性が極めて高い!」では、CRMとは、既存顧客と密接な関係性を構築し、優良顧客に育て維持・拡大していくことであり、CRMが重視されるようになった要因の一つに、多くの企業にとって市場が成熟してきたため、新規顧客獲得がより熾烈な競争となった結果、いちど獲得した顧客の囲い込みがより重要であり、優良顧客の方が新規顧客よりも売上貢献度が大きい、ということをご説明しました。(事実、弊社のクライアント企業様の顧客分析を行いますと、この点が非常に如実に表れ、いかに既存顧客を優良顧客に育てていくかが、大きなフォーカスポイントと言えます)
問題はいかに既存顧客と密接な関係性を構築するか?ですが、その第一歩は何といっても顧客の声を聴くこと、顧客を理解することにあります。その理由は、弊社が標語として掲げているフレーズに言い表されています。

The customer knows everything.(顧客はすべてを知っている)

ただ、顧客の声を聴くにはそれなりのテクニックが必要です。従来は、マーケットリサーチという形で、一部の見込顧客や既存顧客へのインタビュー調査や、商品・サービス提供時のアンケート調査、あるいはカスタマーセンターを用意して、顧客からの問い合わせ、苦情を受け付け調査する顧客満足度調査等が行われてきました。

しかし、近年ITの発達により、顧客をより広範囲に多数の視点で捉えることができるようになりました。具体例としては、顧客の購買情報(POSデータ)を収集しつつ、ポイント会員のプロフィール情報を突合し、会員顧客がどのような購買履歴を持つかを把握することもできるようになりました。さらに、こうしたビッグデータに対して様々な分析手法を駆使することで、顧客がどのような嗜好を持っているかを把握し、次にどの商品・サービスを薦めるべきかを考えられるようになりましたし、実際リコメンドプログラムも定着するようになってきました。

言い換えれば、顧客を単なる商品・サービスと引き換えにお金を払ってくれる人として扱うのではなく、データ提供者として全人格的に把握できればできるほど、個々の顧客にあったアプローチ(1 to 1マーケティング)やプロモーションが可能であるということを示しています。そして、今まで情報量が多すぎて処理が追いつきませんでしたがITの発達により処理ができるようになったことも追い風になっています。

このように整理すると、企業は顧客をいかに全人格的に把握するかが重要で、それが今後の施策の成果や、ひいては業績にも大きく影響すると言えます。

このような背景から、ソーシャルネットワークサービス(SNS)を使って顧客をより深く理解したいと考える潮流がでてきました。なぜなら、SNSは、個々人がデジタルでパーソナルな情報や考えを「自発的」に不特定多数に対し発信しているからです。

こうしたSNSでの会話や発言を傾聴し、今後のマーケティング活動の参考にしようという動きが「ソーシャルリスニング」です。

ソーシャルリスニングの特徴と活用事例

従来のマーケットリサーチとソーシャルリスニングとの違いは、比較的短期間かつ低コストで実施可能であることですが、より大きな価値としてはサイレントマジョリティへの自然なリーチアウトではないでしょうか。前者では、元々自社のファンが対象のケースや、調査にご協力くださいと言われ応じる人のケースであったため、調査であることを意識し、調査員を気遣った発言をする可能性もありました。

この場合、何かしらのバイアスがあることは否めず、消費者の自然な声かどうか、懸念が残ります。(通常、多少の不満や満足があっても、なかなか言わないものです。)

一方、SNS上での発言は調査されている意識もなく、自発的に行われているので、調査する側の意図への配慮はなく、調査側の思い込みや隠れた前提をいい意味で覆す、新たな発見の可能性があります。

但し、その分リスニングする側としては、これら膨大かつ全てフリーアンサー形式の生データから調査目的に沿った、価値ある内容のみを抽出する工夫・ノウハウ、及び有用な文脈(コンテクスト)を読み解く読解力が必要となります。特に抽出時には、検索条件を緩く設定してしまうと、本来欲しいと思う情報以上にピンボケした情報が大量抽出されますし、逆に検索条件がきつすぎると、望ましい結果が得にくく、試行錯誤やセンスが求められます。

ここで、基本的な市場情報に補完する形での、「ヘアオイル」に関するソーシャルリスニング調査弊社公式ホームページ掲載用に行ったものですので、3年前の分析事例です。)をご紹介します。

まず、全体的なトレンドをツイート件数より見ると、2013~2014年比で約10倍であることが分かり、関心の高さが窺えました。次に、Twitterで実際にどのような印象を持っているのかを調査しました。具体的には、収集した大量のツイートに構文解析を行い、ヘアオイルに対する受け止め方がポジティブなのかネガティブなのか、そしてどのように表現されているか(代表的な・頻出するキーワードは何か)を把握します。大量のテキストの全体像を大まかに把握するため、ワードマップによる可視化を行いました。

ワードマップ事例
 ワードマップ事例


上記図はワードマップという、頻出キーワードとその関連キーワードの関連を示す図で、頻度の高さをバルーンの大きさで示しています。結果、「良い」、「さらさら」、「しっとり」と概ねポジティブな印象が広がっていることが読み取れます。一方、「良い」、「好きだ」に関連して「甘い」というキーワードが出てきていますが、同時に「駄目だ」、「臭い」というネガティブなキーワードにも関連していますので、ヘアオイルの匂いが評価の分かれる要因であることが分かります。また、「悪い」に関連して「べたべた」というキーワードが出ており、オイルの付けすぎに注意を促す必要があります。

この他、ポジティブ・ネガティブではないですが、「新しい」、「欲しい」というキーワードの関連性が強いことから、他のオイルを試してみたいという他商品への購買意欲も窺えます。また、価格への感覚として「安い」よりも「高い」と考えられている傾向が強いですが、高くても「女子力」アップに繋がるといったポジティブ発言も見られます。

よって、例えばヘアオイルの新規参入を考える際には、市場には新商品に対する関心度もあり、少々高い価格帯であってもそれなりに需要が見込めること、差別化要因の一つに香りが挙げられ、甘すぎないこと(甘さ以外の女子力アップを連想させるような香りとの組合せも検討の余地あり)、使用上の注意として一回の適量がどれだけであるかをきちんと伝えることを意識すべきであることが分かります。

ソーシャルリスニングの発展形・リスクマネジメント

ソーシャルリスニングは炎上の早期発見につながるソーシャルリスク対策にも役立ちます。
例えば、企業が新しいアクションを起こし、市場の反応がネガティブである場合、迅速かつ誠実なリアクションがうまくとれれば、失地回復が可能であったり、好印象を市場へ与えたりすることができます。しかし、迅速でなかったり、社会にとって不誠実であったりした場合には、企業への風当たりは厳しいものになります。
例えば2009年Hulu社が顧客への事前連絡なしに人気番組の削除をしたところ、直後から怒りの声がソーシャルメディア全体で起こりました。Hulu社は、2週間以内にソーシャルメディア上の声を分析し、CEOより番組の削除に関する適切な説明がなかったことへの謝罪と、2週間配信後改めて削除する旨の文書を顧客へ送付しました。この誠実な対応により、ソーシャルメディア上でも顧客が好意的に受け止めたことが確認されました。

SNSが誕生する以前にもダメージ・コントロールという概念はありましたが、
SNSの誕生によって企業が、より迅速で誠実な対応を求められるようになりました。それは企業が日ごろ顧客や社会全体に対し抱いている価値観・使命感、ひいては企業の本当の姿が如実に表れる可能性がありますので、注意が必要です。ソーシャルリスニングを有効に活用し、マーケティングやリスク回避にお役立てください。

次回は、CRM戦略におけるSNS活用法の第二弾として、ソーシャルログインについてご説明する予定です。引き続きどうぞよろしくお願いします。

 


本コラム著者紹介

株式会社スマートウィル代表取締役坂本雅志

株式会社スマートウィル代表取締役坂本雅志株式会社スマートウィル 代表取締役 坂本雅志
横浜市出身、青山学院大学経済学部卒、青山学院大学大学院修了
日本生命保険相互会社において、12年超に亘り、リテールマーケティング戦略に従事。
2005年、企業買収(PE投資)を主軸とする日興プリンシパル・インベストメンツ㈱(現シティグループ・キャピタルパートナーズ合同会社)に参画。マーケティング戦略担当として、小売り流通、ホテル、美容、人材派遣、情報通信等の投資先の経営支援を担当後、テレマーケティング事業のリーディングカンパニー「㈱ベルシステム24」の社長室長、執行役員営業企画室長、専務執行役・COO(最高執行責任者)等に従事。この間、BBコール㈱取締役、㈱ワン・トゥ・ワン・ダイレクト代表取締役社長、社団法人日本テレマーケティング協会常任理事等を歴任。
2010年独立起業、CRM戦略を核とした経営コンサルティング会社、株式会社スマートウィルを設立し現在に至る。
2012年より、青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科にて非常勤講師を務める。担当講座「CRM戦略」
著書:「この1冊ですべてわかる 『CRMの基本』」日本実業出版社
 
 
株式会社スマートウィル
事業内容:

CRMコンサルティング業務
・顧客識別に向けた顧客・購買DB分析
・優良顧客維持・拡大施策 企画・開発・運用
・店舗CRM(販売支援ICTソリューション) 企画・開発・運用
・優良顧客予備群囲い込み施策 企画・開発・運用
・CRM浸透に向けた人事評価プログラム構築

各種研修サービス
市場調査関連業務
主要取引先:資生堂、NTTドコモ、オークローンマーケティング(Shop Japan運営会社)、インポートアパレルブランド各社、インポートコスメティクスブランド各社、インポートライフスタイルブランド各社等
所在地:〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-16-4 アーバン虎ノ門ビル6F
設立:2010年4月28日
代表者:代表取締役 坂本雅志
お問合せ:contact@smartwill.co.jp
URL:www.smartwill.co.jp

スマートウィルへのお問い合わせはこちら

スマートウィルとアライドアーキテクツ共催セミナーのお申込はこちら

TOP