SNS for Biz
by Allied Architects

【第五回】次世代のCRM

前回「【第四回】SNSを活用した見込み優良顧客の獲得」では、精緻な顧客分析の上で、SNSの膨大なユーザーからターゲットを絞ったプロモーションを行う事による、効率的な顧客育成について、ご説明させて頂きました。SNSのネットワークとしての力を上手く活用することで、CRMを基軸としたマーケティング戦略の可能性と威力をお感じ頂けたのではないでしょうか。
筆者は、SNSが普及する環境下において、マーケティング戦略はCRMに帰結すると言っても過言ではないと考えています。それほどCRMにとって、SNSは強力なパートナーであると思うのです。

さて、筆者の思いを語りだすと、それだけで別のコラムが必要になってまいります、、、紙幅の関係もございますので、今回は次世代のCRMについて、SNSとの関係性に照らし、お話をしていきたいと思います。

自治体におけるCRMとその未来

先日、都内某区役所で働く役職員の皆様に、自治体におけるCRMをテーマにした、講演をさせて頂く機会を頂きました。その場において、役職員の皆さんと議論した話しを少しご紹介します。

「行政サービスにCRMって必要あるのでしょうか。」
「そもそもCRMは、上得意顧客の事を少しえこひいきして、効率的な企業活動を行うための仕組みとも言われています。」
「全ての住民に、共通のサービスを提供することが使命である行政サービスにとって、えこひいきは考え難いものです。」
「CRMを展開するにあたって、『お客様の声を経営に活かす』という考え方があります。これは、企業の最重要経営課題といっても過言ではありません。行政に置き換えれば、「住民の声を行政に活かす」ということです。」

 


行政サービスを議論するにあたって、「マイナンバー」は、外せないものです。導入から約1年半(平成29年5月15日現在)での普及率は9%程度(総務省調べ)となっています。普及率高低の議論は様々なされており、分かりにくさとともに、メリットをきちんと伝えきれていないことや、国民を政府が監視するような印象を国民が持ってしまっている事などに普及率の低さが表れているようです。大変残念な状況だと個人的には感じています。このマイナンバー制度、弊社がCRMを語る上で、絶対的に必要な概念として提唱する「1顧客1ID化」と言う考え方の国民版ではないかと思うのです。すなわち「1国民1ID化」です。


参考)
「1顧客1ID化がCRMの基本」といった話を当コラムの第3回でもお話しさせて頂いておりますので、併せてご確認頂ければ幸いです。1人の顧客に1つのIDを付与して購買履歴や行動履歴を一元管理するといったお話しです。https://sns4biz.com/column/2808


このマイナンバー制度、普及とは裏腹に、着実に利用分野の拡大が検討されています。行政サービスの利便性向上に止まらず、健康保険証や企業の社員証、入退館証等、その活用範囲はどんどん拡大する可能性があります。

先進国事例:エストニアの国民ID番号

北欧のエストニアは、バルト三国のひとつで、ロシアの西側に位置し、九州より少し広い国土に、約130万人が暮らしています。首都のタリンには人口の30%にあたる約40万人が住んでいて、タリンの旧市街は世界遺産としても知られています。IT立国としても有名で、Skypeはエストニアが創業地です。
そのエストニアの国民ID番号が、近年先進事例として注目を集めています。1990年代から既に存在していたとの事ですが、2002年にeIDカードが導入され(15歳以上の所持が法律で義務付け)、当初は困惑する国民が大多数だったそうですが、利用範囲が拡大され、行政サービスのみならず、民間サービスが増えることによって、定着化が進み、現在では80%を超える普及率との事です。


エストニアのeIDカードの表面

 


エストニアのeIDカードの裏面

その利用範囲は、自動車運転免許証、銀行サービスや企業の社員証、お薬手帳等約3,000のサービスが存在します。こうしたサービスを支えているのが、データ交換基盤「X-Road」です。このX-Roadは民間企業もアクセスできる仕組みとなっており、約300のデータベース連携が実現しています。eIDカードさえあれば、日常生活にはほとんど支障がないというレベルまで辿り着いているそうです。まさに、「1国民1ID化」の世界ですね。セキュリティ面なども工夫されていて、エストニアでは政府機関に蓄積された個人情報に対するアクセスログは全て記録されており、閲覧状況も自分で確認できるようになっています。無論、全ての国民に浸透しているわけではありませんので、国民のITリテラシーを高める事も国家的課題といえ、その取り組みにも積極的なスタンスを取っています。
ここでCRMの視点で考えたいのは、自治体にとっての優良顧客とは何かということです。国民ID番号の先進国であるエストニアでもその利用状況に応じて何かの行政サービスが優遇されるという事を主旨としたものではないはずです。先の某区役所の役職員の皆さんとの議論の中では、「税金をたくさん納めて下さる方」といった意見も少なからず出て来ていましたが、高額納税者であるからと言って、公然と差別化が出来るものでもありません。本質としては、行政においてのCRM活動というものは、すべての住民が、自分の住む街を愛し、自分や家族にとって、いかに住みやすく誇りに感じられるような街にするための行政と住民による取組活動ともいえるのではないかと思うのです。その意味において、マイナンバーで出来る事の可能性を更に模索していきたいところです。

また、CRMと蜜月の関係であるSNSの活用も考えていってはどうでしょうか。

自治体におけるSNS活用事例:Love Clean London

オリンピックを控えたロンドン市で清掃活動に活用されたSNSを中心とした活動です。Love Clean London はロンドンの住民が、地域社会で当局の対応が必要な問題点の写真をアップロードし、対応を自治体側に促すことができる仕組みでした。Facebookなどのアカウントも開設されました。


このSNSを中心とした活動が、落書きと廃棄物不法投棄の減少に繋がりました。Love Clean Londonの先駆けとなった Love Clean Street を開発したルイシャム特別区では、ポータルを公開した後のわずか2年間で、落書きによる苦情が30%減少したそうです。道路の清掃と当局者の対応に関する住民の満足度も向上しました。

現在もこの活動は、FixMyStreetという団体として、続けられています。
http://www.lovecleanlondon.org/

 

日本でも同様の取組は実施されています。

事例:香久池公園の杭が抜けています。
https://www.fixmystreet.jp/reports/4514

こうした取り組みは、住民の声に耳を傾ける事を愚直に積み重ねることで、着実な成果を生んでいきます。住民による自治体へのロイヤリティの醸成に繋がるのではないかと思うのです。ここでのポイントは、自治体が、住民やその取り巻く環境をよく理解する必要があるということです。住民の声に耳を傾けるべきですし、行政サービスの事にも関心を持ってもらった方が良い訳です。マイナンバーの活用状況を加速させ、サービスレベルも向上、蓄積情報を充実させることで、データベースにより多くの視点でデータが蓄積され、分析結果に更なる価値を持たせることが、より良い行政サービスを検討することに繋がるはずです。住民の声に耳を傾けるツールとしてのSNSの活用や、行政サービスとSNSの連携の話もいくつか具体的になってきています。これから益々自治体においてもCRMとSNSの浸透は新たな解釈を加えながら、加速していくのではないでしょうか。進化するCRMとSNSを踏まえて発展する私たちの未来、あらゆる事が便利になっていく世の中を思うと、ワクワクします。


全5回に亘って、「CRM戦略のSNS活用方法、基本と応用」といったテーマで連載してきました。SNS普及前までのCRM戦略は、目の前に顕在化する顧客を選別し、ランクに応じて維持拡大させるといったものが骨子だったと思います。SNS普及環境下における次世代のCRM戦略は、しっかりとした顧客分析の下、潜在的な見込顧客群も対象範囲と捉え、SNS活用で直接的にアプローチすることが可能になりました。
従来のCRM戦略にSNSを組み合わせることで、顧客との関係性構築の新たな手法がどんどん主流になってきています。その動向をしっかりと見据え、半歩先を行くCRMを牽引し、その普及に務めていきたいと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。


【参考文献】
ラウル アリキヴィ,前田 陽二(2016)『未来型国家エストニアの挑戦~電子政府がひらく世界~』インプレスR&D
※eIDカードイメージ出展元も上記文献より


本コラム著者紹介
株式会社スマートウィル代表取締役坂本雅志 株式会社スマートウィル 代表取締役 坂本雅志
横浜市出身、青山学院大学経済学部卒、青山学院大学大学院修了
日本生命保険相互会社において、12年超に亘り、リテールマーケティング戦略に従事。
2005年、企業買収(PE投資)を主軸とする日興プリンシパル・インベストメンツ㈱(現シティグループ・キャピタルパートナーズ合同会社)に参画。マーケティング戦略担当として、小売り流通、ホテル、美容、人材派遣、情報通信等の投資先の経営支援を担当後、テレマーケティング事業のリーディングカンパニー「㈱ベルシステム24」の社長室長、執行役員営業企画室長、専務執行役・COO(最高執行責任者)等に従事。この間、BBコール㈱取締役、㈱ワン・トゥ・ワン・ダイレクト代表取締役社長、社団法人日本テレマーケティング協会常任理事等を歴任。
2010年独立起業、CRM戦略を核とした経営コンサルティング会社、株式会社スマートウィルを設立し現在に至る。
2012年より、青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科にて非常勤講師を務める。担当講座「CRM戦略」
著書:「この1冊ですべてわかる 『CRMの基本』」日本実業出版社
 
 
株式会社スマートウィル
事業内容:
CRMコンサルティング業務
・顧客識別に向けた顧客・購買DB分析
・優良顧客維持・拡大施策 企画・開発・運用
・店舗CRM(販売支援ICTソリューション) 企画・開発・運用
・優良顧客予備群囲い込み施策 企画・開発・運用
・CRM浸透に向けた人事評価プログラム構築
 
各種研修サービス
市場調査関連業務
主要取引先:資生堂、NTTドコモ、オークローンマーケティング(Shop Japan運営会社)、インポートアパレルブランド各社、インポートコスメティクスブランド各社、インポートライフスタイルブランド各社等
所在地:〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-16-4 アーバン虎ノ門ビル6F
設立:2010年4月28日
代表者:代表取締役 坂本雅志
お問合せ:contact@smartwill.co.jp
URL:www.smartwill.co.jp

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