SNS for Biz
by Allied Architects

強まる個人の影響力。集英社が挑むインフルエンサー活用

「Seventeen」「non-no」「LEE」といった多くのファッション誌を手がける集英社が、2017年5月より本格的にインフルエンサーマーケティング事業に乗り出しました。

そこで今回は、集英社の取締役であり女性誌の広告部門を担当する田中恵氏と、同社にプラットフォームを提供するレモネード株式会社CEOの石橋尚也氏にインタビュー。
事業化の背景、インフルエンサーの可能性、インフルエンサーマーケティングを進める上で どのように体制を整えたかについて、詳しく お話を伺いました。

 

●雑誌で築いてきた、読者・インフルエンサー双方との「絆」を強みに事業化へ

SNS for Biz編集部(以下、編集部):本日は、よろしくお願いいたします。
雑誌やコミックなど幅広く手がけられている集英社ですが、改めまして、まずは御社について ご紹介いただけますか?
 
集英社 取締役 田中恵氏(以下、田中氏): はい。集英社は今年で設立91周年となる総合出版社です。ファッション誌から、「週刊少年ジャンプ」といった まんが誌、コミックス、書籍なども手がけています。
ファッション誌は数も多く、中高生から50代まで幅広い層の読者に ご愛読いただいているのが特徴です。WEBにも力を入れており、現在、女性誌のWEBコンテンツは合計すると1億2000万PV以上ありますし、EC事業も ずいぶん大きく育ってきました。
私自身、「LEE」という雑誌に20年ほど携わってきましたが、11年ほど前に「LEEマルシェ」という通販を始めたんです。その当時は、雑誌の編集部が通販を運営するだなんて全くなかったことだったため、インパクトがありましたね。

 
集英社より発刊のメディア
 

編集部 今回事業化されたインフルエンサーマーケティングは、どのような体制で対応されるのですか? 
 

田中氏 雑誌の中に入っている広告をクライアントに提案するのが広告部なのですが、その中でインフルエンサーの施策は、クライアントへの営業サイド・デジタル戦略企画サイドが中心となり、それに各雑誌の編集部が連携して進めています。直接インフルエンサーと向き合っているのは、各雑誌の編集部です。

 

●SNS普及前からインフルエンサーマーケティングは存在し、価値があると実感


株式会社集英社 取締役(広告部・女性誌担当)田中恵氏

編集部 複数の部署を巻き込んでの事業なのですね。今回、御社がインフルエンサーマーケティングに目を向けた きっかけは何だったのでしょうか?
 

田中氏 そもそもインフルエンサーマーケティングに限らず、広告部の役割はクライアントのマーケティングを支援することで、雑誌を通じてお客様に商品やサービスの良さを紹介することです。クライアントは、雑誌のブランド力を有効に活用される目的で広告出稿をします。加えて、読者は雑誌の情報に大きな信頼があるため、マーケティング施策がしやすいとクライアントから評価をいただいてきました。
もう一つは、一般の人や読者モデルのInstagramでの情報発信など、インフルエンサーマーケティングの存在感が高まってきていたことも背景にあります。その流れを受けて、クライアントからインフルエンサーを活用した取り組みに関する相談が増え始めました。
 

編集部 これまで築いてきた読者との絆やクライアントからの声があり、インフルエンサーマーケティングの価値を以前から感じられていたということですね。

田中氏 はい。私は編集者歴が長くて「MORE」で10年、「LEE」で20年。特に「LEE」は編集長も経験し、「読者の力って すごいなぁ」ということをSNSが読者の生活に なじむ前から感じていました。
例えば、読者の中から選抜した100名のブロガー組織「LEE100人隊」というコミュニティを作ったことがあり、ブロガーたちに自分が買い物したものを紹介してもらう企画でして、PVや読者の反応が とても良かったのです。
 

編集部 読者を巻き込んだ素敵な企画ですね。LEE100人隊のブロガーのコンテンツで、印象的だったエピソードはありますか?
 

田中氏 一つの事例ですが、アロマキャンドルの人気が出始めたころのことです。あるセンスのいい人気読者ブロガーが自身の最近の お買い物商品として、LEDのアロマキャンドルをブログで紹介しました。火を使わないキャンドルなので、それが お子様を持つ読者の方にも響いて、数日後、雑貨屋さんからLEDのアロマキャンドルが消えてしまうほど売れた、ということがあったんです。身近な存在だけれど、とてもセンスが良い方に対する読者の反応の良さを実感しました。
そういう過去もあり、インフルエンサーマーケティングは、これは私たちが ずっと得意としてやってきたことだと気づいたのです。であれば、それを きちんと体系化できれば私たちのマーケティング支援の新たな方法として、クライアントに価値を提供できると思いました。
 

編集部 なるほど。そういった流れがあり、インフルエンサーという存在にスポットライトが当たる前から個人の方が発信する情報への効果を感じておられて、その後 世の中が「インフルエンサー」という存在にスポットライトを当て始めた、ということですね。
 

田中氏 そうですね。あとは、雑誌にはインフルエンサーを見つけて育てる、という役割もあると思っています。
例えば、今やテレビなどでも大活躍のタレントさんでも、最初は弊社の雑誌であるSeventeenやメンズノンノのモデルオーディションで選ばれたことがブレイクの きっかけであるというようなことがよくあります。
また、雑誌では、モデルやタレントの方を1回紹介して終わりではなく、さらに時間をかけて素敵な部分を紹介し続けるうちに人気が高まっていくことが多いです。そういった特性もあり、雑誌はインフルエンサーマーケティングとも親和性が高いんですよね。

もう一つは、インフルエンサーの方々との間に信頼関係ができていることも大きいです。読者、インフルエンサー、それぞれに対して強い「絆」があるということは、インフルエンサーマーケティングでクライアントを支援するにあたり他社とは違った強みであると感じています。

 

●インフルエンサーのパターンごとに、コミュニケーションを進めたい。発生する膨大な作業の効率化に役立てたのは?

編集部 それでは次に、新たに始めたインフルエンサーマーケティング事業について お聞かせいただけますか?
 

田中氏 インフルエンサーを、「スペシャルインフルエンサー」「読者インフルエンサー」「編集部チョイスのインフルエンサー」の 3パターンに分け、クライアントの目的や案件に応じてアサインする設計をしていこうと考えました。「スペシャルインフルエンサー」はモデルやスタイリスト、料理家、タレントなどの いわゆる有名人、「読者インフルエンサー」は弊社の読者・ブロガーが中心。そして、「編集部チョイスのインフルエンサー」は、レモネード社のインフルエンサープラットフォーム『INFLUENCER ONE』の中から編集部が選んだインフルエンサーです。
「読者インフルエンサー」、「編集部チョイスのインフルエンサー」は、全体に いわゆるコアなファンを抱えるマイクロインフルエンサーやナノインフルエンサー(※)が中心ですね。


(※)マイクロインフルエンサー・ナノインフルエンサーに関する解説は、コチラ


インフルエンサーマーケティングを進めるにあたって案件ごと、個別にインフルエンサーと連絡を取って進めると、非常に膨大な事務的なやりとりが発生し、煩雑な作業が多くなります。連携するインフルエンサーの人数が多くなればなるほど やり取りも増えますので、それは体制の面で負荷が大きく、スムーズに進められるソリューションを探していました。


編集部 ありがとうございます。今回、集英社様がインフルエンサー事業のために採用された『INFLUENCER ONE』について、石橋様、ご説明をお願いできますか。
 

レモネード 代表取締役CEO 石橋尚也氏(以下、石橋氏):はい。『INFLUENCER ONE』は、弊社が提供するセルフサーブ型のインフルエンサーマーケティングのプラットフォームです。のべ5,000万フォロワーを抱えており、大手ブランド、広告代理店、媒体社に ご利用いただいています。
企業とインフルエンサーが手動で案件のやり取りをしていたものをプラットフォーム化し、スムーズに案件の進行管理ができるというものです。
  

セルフサーブ型のインフルエンサーマーケティングのプラットフォーム、『INFLUENCER ONE』

編集部 今回の業務提携では、どのような活用のされ方をされているのでしょうか。
 

田中氏 「スペシャルインフルエンサー」は料理家やスタイリスト、タレントなど、いつも我々が一緒に仕事をさせていただいている方たちですので、スムーズに直接依頼ができます。そのため、このインフルエンサーについては直接編集部が運用します。弊社の読者やブロガーである「読者インフルエンサー(※下記図内「集英社独自のインフルエンサー」)」や「編集部チョイスのインフルエンサー」へ案件をオファーする際は、レモネード社の『INFLUENCER ONE』を用いてスムーズに進めます。
(読者インフルエンサー活用には『INFLUENCER ONE』SaaS版を採用、編集部チョイスのインフルエンサー活用には『INFLUENCER ONE』を採用)


集英社のインフルエンサーマーケティング事業における、『INFLUENCER ONE』活用の全体図
 

編集部 インフルエンサーマーケティングのサービスがいくつかある中で、レモネード社と組むことになった経緯を お聞かせいただけますか。
 

田中氏 インフルエンサーマーケティングを体系化してやっていこうというときに、実は何社かとお会いしたんですよ。先ほどお伝えした通り、本格的に始めるとすごく煩雑な作業が多くなるのですが、『INFLUENCER ONE』は、それを解決できるようにシステムを使う側の視点に立ったUIや機能に落とし込まれていたことが大きかったです。プラットフォームのSaaS版を開発していただけたところも ありがたかったです。

もう一つは、レモネード社のインフルエンサーマーケティングに対する考え方に共感したという点もあります。
石橋さんの お話を伺っていると、インフルエンサーの方々の世界観を、すごく大事にしていることが分かりました。やみくもに商品をPRしてもらうのではなく、インフルエンサーが魅力的だと思ったものを、その方の世界観の中で自然に紹介してもらうことが重要であるというところに大きく共感しました。PR表記など関係性の明示についてはトラブルになりやすい部分もありますので、そこを誠実に取り組まれているところも信頼できると思いました。
 

編集部 インフルエンサーの世界観を大事にする お話、大変興味深いのですが、インフルエンサーマーケティングを企業が進める上で大事なポイントは どのようなことだと思われますか?
 

石橋氏  インフルエンサーへ向き合うという面においては、インフルエンサーに権限委譲することが もっとも重要なポイントになります。
インフルエンサーのコンテンツに対するディレクションが多いと、そのインフルエンサー本来の良さやコンテンツ制作力が失われるだけでなく、やらせ感、わざとらしさが出てしまい、かえって逆効果になります。そのため、広告やキャンペーンのような考え方をせずに、インフルエンサーと『コラボレーションする』という考え方のもとインフルエンサーに対して権限委譲することが重要になってきます。
また、『インフルエンサー』という考え方ではなく『クリエイター』と捉えることも重要です。実際にInstagram社もインフルエンサーという言葉を使わず、『クリエイティブ』や『クリエイター』という言葉を使っているように見受けられます。


レモネード株式会社 代表取締役CEO 石橋尚也氏

 

●インフルエンサーへの依頼をオートメーション化。多様な業種のクライアント支援を開始

編集部 5月末にサービス開始のリリースをされて、クライアントからの反応はいかがでしょうか。
 

田中氏 ありがたいことに、リリースの当日から大きな反響がありました。「3つのタイプのインフルエンサーを活用したプロモーションをしたい」「読者インフルエンサーのみを活用したプロモーションを行いたい」など、企業様からさまざまな お問い合わせをいただき、関心の高さを感じています。
化粧品メーカーのイベント案件や食品メーカーの商品紹介案件など、既に10件以上の案件が進んでいます。
 

編集部 実際に企業から案件を受けてインフルエンサーを探す際は、『INFLUENCER ONE』を活用して どのような流れでオファーしていくのでしょうか。
 

田中氏 「読者インフルエンサー」「編集部チョイスのインフルエンサー」へのオファーは、『INFLUENCER ONE』を活用し行っています。こういう案件がありますということをシステム上で募り、反応があった中から適性やフォロワー数などによって お願いする方を決めていく、という流れです。
 

石橋氏 これまでに投稿した写真やテキスト、多く活用しているハッシュタグなどを一覧で見ることができます。また、その方の興味範囲が分かるようになっています。やり取りについてもメッセージでの やり取りではなく、メッセージテンプレートの登録と一括操作をしていただくことができるようなシステムになっています。
 

編集部 運用の負荷が、とても軽くなりそうですね。案件によってインフルエンサーへのコミュニケーションは変わってくると思いますが、システム内の操作の柔軟性はいかがでしょうか?
 

田中氏 実は、一概に全ての案件で同じフローで回せるかというとそうではないです。複雑な案件の場合は依頼の仕方を改善する必要もあるので、軌道に乗せるまでには もう少し試行錯誤していきたいなとは感じています。ただ、そもそも このプラットフォームがなければ煩雑すぎてやり切れない、というのも事実です。
 

編集部 リスクというと、インフルエンサーの方がクライアントの意図せぬリアクションをとるのでは?という懸念から、インフルエンサー活用に踏み込めない企業様もいらっしゃいますが、いかがでしょうか?
 

田中氏 今のところ、あまりないですね。逆に、こちらが想像している以上に良さを具体的に しっかりと書いてくださるインフルエンサーがいることに驚きました。ただ、どちらにしても投稿内容やハッシュタグなどに誤りがないかを事前に弊社側でチェックしていますので、私たちが介在してクライアントのインフルエンサーマーケティングを支援する価値がそこにもあるかな、と感じています。
 

編集部 予想以上に、インフルエンサーのポジティブなリアクションが獲得できているのですね! 

 

●強まり続ける、個人の影響力。今後もインフルエンサーを含む読者とのコミュニケーションを大切にして、最良の形を作りたい

編集部 それでは、最後の質問をさせていただきます。貴社のデジタルマーケティング全般、そして、インフルエンサーマーケティングについて、今後の取り組みの方針を教えていただけますでしょうか。
 

田中氏 昨今はマーケティングにも さまざまな手法があると思いますが、先ほどもお伝えした通り、これまで培ってきた雑誌ならではの編集力やネットワーク・読者との絆という弊社独自の強みがあるので、それらを活かしてできることを見つけていきたいと思っています。弊社が独自に持つデータの活用も、今後は積極的に行っていきたいですね。
インフルエンサーマーケティング事業においては ある程度形になり始めていますので、インフルエンサーとの絆を大切にしながら、今後は効率化を追求していきたいと思います。そして、インフルエンサーを通じたプロモーションをクライアントに ご活用いただきたいです。今回のインフルエンサーマーケティング事業を きちんと事業化できたのは、レモネードさんとの関係あってのことですし、ありがたいです。
今後も、丁寧に大きく育てていきたいですね。
 

編集部 かなり手応えを感じていらっしゃるのですね。インフルエンサーの存在自体への可能性で、感じていることはありますか?
 

田中氏 SNSが出てきて誰でも自由に情報を発信できるようになって、個人の影響力が とても強くなってきていると感じています。例えば、写真コンテンツのクオリティ。かつてはプロカメラマンと読者の間には、レベルの違いが かなりありましたが、カメラの性能が上がっていることも後押しして、その差が どんどん縮まっているのではないでしょうか。
メディアを通じて読者の背中を押すのが仕事だと思ってやってきましたが、今後は、読者やインフルエンサーと協力してメディアを作っていくという関係性に変わっていくと思います。個人の力が高まったことで、おのおのが素晴らしいメディアのように育ってきていると感じますから。それぞれと連携して、お互いにとって最良の形を模索していきたいです。
 

編集部 御社がメディアを通して培ってきた、インフルエンサーとの距離や信頼関係が根底にありますよね。インフルエンサーを活用した企業のお取り組みは、今後ますます楽しみですね。
本日は、ありがとうございました! 

■インタビュイー 
株式会社集英社 取締役(広告部・女性誌担当)田中恵氏
レモネード株式会社 代表取締役CEO 石橋尚也氏
■インタビュアー
アライドアーキテクツ株式会社 SNS for Biz編集部
■撮影
小野田友明

●効果を生み出すインフルエンサー施策、できていますか?

■インフルエンサーのフォロワー数や投稿内容を確認するだけでは、自社ブランドを効果的に訴求してくれるのか判断ができない。

■インフルエンサー活用の成果が停滞している。フォロワーが多くSNSでの影響力の強いインフルエンサーをアサインしているのに、成果が上がりにくくなってきた。

■インフルエンサー施策の管理・運用が、とても大変。インフルエンサーの活用量・アサイン人数に比例して管理運用工数が膨大になってしまい、やりっ放しの施策になってしまう。

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